行動経済学の理論

行動経済学における諸理論。

 

〇サンクコスト効果(コンコルド効果)=毒を食らわば皿まで

サンクコスト効果とは、もう成功の見込みが薄いとわかっているのにもかかわらず、それまで投資した分を「もったいない」と感じてしまい、成功するまで投資を継続し、後に引けないことを指す。コンコルドとは超高速旅客機の名前であり、多大がコストをかけた挙句、大赤字になって終わった。

 

日常生活の活用例:「食べ放題」→元を取ろうと思ってついつい食べ過ぎてしまう(もうこれ以上食べると逆に肥満など自分の損になるとわかっていても、やめられない)

「飲食店の行列」:待ち時間が長いと、途中で気が変わったりしても、これまでの待った時間のことを考えて最後まで並んでしまう。

 

保有効果

 

人は自分が所有している者に対して価値を感じること。物を捨てられないのはこの例。

 

〇極端性回避の原則

 

焼き肉店などで「松:3000円、竹:1500円、梅:800円」のメニューがあるとき、「竹」が一番売れる現象のこと。人は極端な選択肢を避ける傾向がある。

これは「プロスペクト理論」が働いている。つまり、「損を回避したい」という心理である。これは「贅沢なものを選んでも一つだった時に損したくない」「安いものを選んで低品質だったら損」という心理が働くからである。

 

〇誘導効果

 

行動経済学では、BGMがどのように人の意思決定に影響を及ぼすかの研究がなされている。

「イメージ誘導効果」→クラシック音楽を流した時には、ワインの売り上げが上がり、フランス曲を流すとフランスワインが良く売れたとする研究により、「クラシック音楽=高級」というイメージが誘導されたのではないかとする効果のこと。

「感情誘導効果」→スーパーではアッパーテンポよりスローテンポにすることにより人の移動速度が遅くなり売り上げが上がり、病院ではオルゴール曲を流すことにより患者がリラックスするという効果のこと。

 

 

〇ハーディング効果

 

人は周囲につられやすいとする効果のこと。リーマンショックやバブルなど「まわりはみんな買っている」「乗り遅れたくない」といった心理が働くことを指す。

 

 

〇端数効果

 

「980円」「1980円」などは、「1000円」や「2000円」よりもお得に見えるという現象のこと。これらは「大台割れの価格」と呼ばれる。端数にすることによってお得感を出すことを端数効果という。

 

→お得感を出す効果として「身近なものに例える」というものがある。「2000mgのビタミンC」と言うより「レモン100個分のビタミンC」といったほうが身近に感じられる。「東京ドーム20個分」という表現もこの一つである。これらのものを「シャルパンティエ効果」という。

 

シャルパンティエ効果の応用として、「2回に分けて割引する」というものがある。値札に「50%OFF!」「レジにてさらに20%OFF !」というと、実際は60%OFFなのだが、70%OFF と勘違いしてしまう。

 

〇ライベンシュタインによる人のものの購入による意思決定の研究

 

バンドワゴン効果

 

バンドワゴン効果とは、大衆が「よい」といっているものを、その物を全然知らない人でも「よい」と認識し、周囲と同じ行動をとることをいう。

 

スノッブ効果

 

人が欲しがるものはバンドワゴン効果に代表される「流行もの」だけではなく、限定的、特別なものにも惹かれる。スノッブとは「俗物的」「上流気取りの」という意味であり、「オーダーメイドスーツ」など、他人とは違うものを欲しがる傾向を指す。

 

・ウェブレン効果

 

ウェブレン効果とは、「他人に見せびらかしたい」などの理由で高級品を嗜好することを指す。この場合、物は高価であれば高価であるほど特別感、高級品であることを演出できるようになるため、同じようなものが無印で販売されていても、高級品を購入する傾向にある。

 

〇イケア効果

 

人は自分が手間をかけたものに愛着を持つ傾向があるという考え方のこと。IKEAで買った家具のほうが、既製品の家具よりも愛着を持たれているという研究から名づけられた。

イケア効果のポイントは「最後に手を加える」ということである。部分的にでも、少しでも手を加えることができるのだが、ほとんどが完成しており、最後の一押しを自分でやるものと、ほとんどを自分でやり、最後だけ別のだれかがやったものとでは、前者のほうが価値が高いと人は判断する傾向にある。

 

 

〇おとり効果

 

アリエリーの実験では、以下のような選択をアンケートにて回答してもらった。

 

A:ウェブ版のみ(59ドル)

B:ウェブと印刷版のセット(125ドル)

 

この二択であれば、ほとんどがAのウェブ版のみを選択した。次に

 

A:ウェブ版のみ(59ドル)

B:印刷版のみ(120ドル)

C:ウェブと印刷版のセット(125ドル)

 

この時は、人はCのセット版を一番多く購入した。

この時、三択として、わざと「印刷版のみ」というダミーの選択肢(最初から選ばせる気のない選択肢)を乗せることによって、Cを多く購入させることができた。このことを「おとり効果」と呼ぶ。

 

定本