決算書における安全性の分析

 

流動比率

流動比率流動資産÷流動負債によって求める。企業は自己資本が100%のものばかりではなく、逆に、自己資本比率が100%であるとそれは企業の資金繰りの効率性としては、最適ではない(MM理論)。
そこで、節税効果も期待して、会社は金融機関などからお金を借りるのが基本である。逆に、金融機関としての関心事は、「貸したお金が焦げ付かずに返ってくるか」ということである。もちろん口頭ではなんとでも言えるので、法人税法など法律に基づいて計算・公表された貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書などの決算書類を分析することにより評価することになる。

 

上の流動比率は、流動資産を流動負債で割ることによって求める。「流動」とは「1年以内に換金が可能であるか」というのがざっくりした意味となる。負債には期限がつきものである。流動負債とは1年以内に返さなければならない負債とされており、これを流動資産との比率で考えることは、「1年以内に返さなければならない負債を1年以内で換金できる資産によってどれくらい賄えるのか」といったものを見ることになり、これが200%以上であると、短期的(1年以内なので)に見て返済能力として安全性が高いと評価されることになる。

流動資産のうち、換金性がより高い当座資産を流動負債で割ることによって得られるのが当座比率である。短期的により安全性の高さを見るときに使われる。当座比率は100%以上で安全性が高いとされる。(つまり、当座預金だけで流動負債を賄える)

 

〇固定比率

この続きを読むには
購入して全文を読む

決算書における成長性の分析

〇会社の成長性を見るにはどうすればよいのか?

 

決算書から会社の成長性を見るにはどうすればよいのか。

会社の成長とは、「売り上げが順調に伸びていくこと」「稼いだお金を商品開発や設備導入など投資に回していること」である。

 

会社が成長する原因は「内的要因」と「外的要因」の二つがある。

内的要因は、新しい商品開発をした。新しい販売方法を導入したなど、会社の努力の賜物である。一方で、外的要因は市場規模そのものが大きくなった。景気が回復したなど、会社の努力外のものである。

 

会社が成長しているかどうかを見るためには過去の決算書との比較がかかせない。それも、前年比較では赤字になっているものでも、5年で比較してみるなど、長期で比較してみるとよくなっている場合も多い。これは、例えば新規の商品を開発したとしても、それが市場に浸透するまでには時間がかかるためである。

この続きを読むには
購入して全文を読む

介護保険における「認定」から「サービスの開始」までについて

介護保険の内容について

 

介護保険の内容にはどのようなものがあるのか。

 

介護給付の内容

 

介護保険の給付の内容については、大きく

・介護給付

・予防給付

・市町村特別給付

に大別される。その具体的内容は上図のとおりである。

 

〇介護サービスを受けるときの利用者の支払いの仕方

 

原則は「償還払い」となっている。しかし、実際は「現物給付」の形をとっている。

→しかし、特別な場合は原則通りの償還払いとなっている。その特別な場合とは、主に特例居宅介護サービス費、介護予防サービス費(特例サービス費)などの場合である。

これらは、例えば認定を受ける前に介護サービスを受けた場合などに適用される。

 

〇介護費用は厚生労働大臣が定める介護報酬の算定基準によって事業所ごとに定められている。算定基準は区分、事業所のある地域、サービスの種類によって異なる。

 

〇払えないときは高額介護サービス費などの制度がある。高額療養費の介護サービス版である。

 

〇不服審査は介護保険審査会が行う。

 

〇ケアマネジメントについて

 

要支援あるいは要介護認定がなされると、ケアプランの作成→ケアマネジメントが必要であるとする考え方が一般的である。

比較:

要介護者:サービス提供は居宅介護支援事業者。ケアマネジメントとはケアマネジャーが行う。

要支援者:サービス提供は介護予防支援事業者(地域包括支援センター)、ケアマネジメントは保健師や主任会議支援専門員が行う。

介護保険はケアプランがないと利用できない。

ケアプランは、基本的にはケアマネジャーが作成するが、自分で作成したセルフケアプランを市町村に届けてもよい。

 

ケアマネジャーは介護支援専門員という。なるためには実務経験5年以上、試験の合格が必要である。

 

要支援認定がされると、個人によって利用できる介護保険の利用上限額が決定される。これを支給限度基準額という。

 

区分支給限度基準額をわかりやすく解説!支給限度基準額との違いも解説!│ケアスル介護 (caresul-kaigo.jp)

 

支給限度基準額とは、「その範囲であれば自己負担額が介護保険の保障内(原則1割)で受けられる金額」のことであり、これ以上は原則全額自己負担となる。居宅や日常生活費は基本的に自己負担である。(おむつは保険適用される場合がある)

 

〇ケアプランの作成について

 

ケアプランは、課題分析、原案作成、担当者会議、説明・同意のプロセスを経て作成される。ケアマネジャーは依頼を受けた自宅を訪問して利用者と家族に面接し、自宅でのADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)、健康状態、居住環境、家庭環境なdを把握して利用さん希望を聞き、どんなサービスが必要を理解し、それをもとにケアプランを作成する。ケアプランは適宜ケア実施後にモニタリングされ、再課題分析により作成が順次見直されていく。

 

〇ケアプランの作り直し

 

ケアにより今まで自立歩行ができなかった利用者があることができるようになったが、しかし代わりに今度は認知症の症状が出てきたなど、順次ケアプランの作り直しの可能性が出てくる。加齢による悪化もある。そのようなときはケアマネジャーに申し出てケアプランの作り直しを依頼することができる。

悪化や良化による要介護支援区分の区分変更は、「認定区分変更」の申請を行う。

 

 

 

介護保険の概要

〇日本は高齢化率が21%を超えた超高齢化社会である。ビジネス街ではともかく、土日に街を出歩いてみれば、右も左も老人ばかりである。

 

「高齢化率」…日本人口の65歳以上の人が占める割合のこと。

 

長寿になることは寿命が延びていいことではあるが、反面、長生きに伴う病気やリハビリといった原因が出てくる。そこで、生活に障害のある高齢者のために介護保険制度が2000年に開始された。

介護保険制度の制度運営者は市町村である。健康保険と介護保険を比較してみると、健康保険は、生まれた時から児童の時は被扶養者として、自分で給料をもらう会社員となったときは被保険者として、毎月の給与明細から社会保険料として、健康「保険料」を支払うこととなる。

 

給与明細における健康保険料欄

 

健康保険における被保険者は「適用事業所にて雇用されている人」である。求人票にも「健康保険」と書かれているのは、その会社が健康保険に加入していることを指す。

 

一方、介護保険の被保険者は年齢によって区別され、個人ごとに加入することになっている。区別は第1号と第2号であり、1号は65歳以上の者、2号は20歳以上65歳未満の者である。保険料は一定の場合による特別徴収と普通聴取の方法に分かれる。

 

介護保険制度と介護保険料について | 都道府県支部 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

 

通常、会社員の場合は給料より自動的に天引きされる。40歳未満の人はまだ天引きされない。しかし、世の中には会社員以外にも自営業者、無職、年金暮らしの人がいる(年金暮らしの人も、65歳以上は介護保険第1号となるため保険料を納めることになる。)。年金暮らしの人は、月の年金が18万以上の人は年金から自動的に天引きされる(特別徴収)

 

〇被保険者の例外として、障害者支援施設、生活保護の者(65歳未満に限る)などは、被保険者とはならない。

 

〇第2号被保険者(40歳=64歳の者)は、「特定疾病」があるときのみ、保険を受けることができる。

この続きを読むには
購入して全文を読む

自己紹介

出身地:兵庫県
出身学科:哲学科
趣味:読書、映画鑑賞、温泉、山登り(最近ご無沙汰)、旅行、クイズ、将棋。

「旅行」:47都道府県踏破。アメリカ、中国、ドイツ、フランス、スイス、イタリア等。旅行で関東や外国に行くときは美術館目当て。他の都道府県に旅行に行くときは観光地、温泉、郷土料理目当て。

「山登り」:沢登り等ハードなものは避けています。富士山、立山、白山、大山、石鎚山等に登りました。

「映画鑑賞」:正確には数えていませんが、体感では300~400本くらい観ている感じです。
ゴッドファーザー』が好き。ホラー、スプラッター映画は殆ど見ません。上の300~400本も、ほぼスプラッター、ホラー、戦争映画は観ていません。「呪怨」や「IT」や「貞子」等は全然観ていません。観ているのは洋画や古い映画が多い。

「読書」:安部公房夏目漱石芥川龍之介太宰治江戸川乱歩オーウェルバタイユモーム、ゾラ等が好きです。

「哲学」:ショーペンハウアーバタイユパスカルが好き。

文学は結構読みます。イタリア、ロシア、フランス、ドイツ、中国、ラテンアメリカ文学等。特にラテンアメリカ文学が好き。

性格:自己中。

〇行った美術館ランキング
ルーブル美術館
バチカン美術館
フィレンツェ美術館
国立西洋美術館
国立新美術館
ヴェネツィア美術館
大塚国際美術館

その他
森美術館
・損保ジャパン美術館(現:SOMPO美術館)
大原美術館
青森県立美術館

〇取得した資格
中小企業診断士(科目合格)
・総合・国内旅行業務取扱管理者
管理業務主任者
・賃貸不動産経営管理
・賃貸不動産メンテナンス主任者
・敷金診断士
日商簿記2級
漢字検定準1級
・中国語検定準4級
フランス語検定5級
・ドイツ語検定4級
・消防設備士(乙7種)
・甲種危険物取扱者
2級ボイラー技士
・大型二種免許
ファイナンシャルプランナー2級
・AFP
・登録販売者
測量士補
温泉ソムリエ
世界遺産検定2級
・第二種特殊無線技士
・運行管理者(貨物)

〇好きなテレビ番組
水曜どうでしょう
『激レアさん!を連れてきた』
『クレイジージャーニー』
『ゲームセンターCX』
『頭脳王』

行動経済学の理論

行動経済学における諸理論。

 

〇サンクコスト効果(コンコルド効果)=毒を食らわば皿まで

サンクコスト効果とは、もう成功の見込みが薄いとわかっているのにもかかわらず、それまで投資した分を「もったいない」と感じてしまい、成功するまで投資を継続し、後に引けないことを指す。コンコルドとは超高速旅客機の名前であり、多大がコストをかけた挙句、大赤字になって終わった。

 

日常生活の活用例:「食べ放題」→元を取ろうと思ってついつい食べ過ぎてしまう(もうこれ以上食べると逆に肥満など自分の損になるとわかっていても、やめられない)

「飲食店の行列」:待ち時間が長いと、途中で気が変わったりしても、これまでの待った時間のことを考えて最後まで並んでしまう。

 

保有効果

 

人は自分が所有している者に対して価値を感じること。物を捨てられないのはこの例。

 

〇極端性回避の原則

 

焼き肉店などで「松:3000円、竹:1500円、梅:800円」のメニューがあるとき、「竹」が一番売れる現象のこと。人は極端な選択肢を避ける傾向がある。

これは「プロスペクト理論」が働いている。つまり、「損を回避したい」という心理である。これは「贅沢なものを選んでも一つだった時に損したくない」「安いものを選んで低品質だったら損」という心理が働くからである。

 

〇誘導効果

 

行動経済学では、BGMがどのように人の意思決定に影響を及ぼすかの研究がなされている。

「イメージ誘導効果」→クラシック音楽を流した時には、ワインの売り上げが上がり、フランス曲を流すとフランスワインが良く売れたとする研究により、「クラシック音楽=高級」というイメージが誘導されたのではないかとする効果のこと。

「感情誘導効果」→スーパーではアッパーテンポよりスローテンポにすることにより人の移動速度が遅くなり売り上げが上がり、病院ではオルゴール曲を流すことにより患者がリラックスするという効果のこと。

 

 

〇ハーディング効果

 

人は周囲につられやすいとする効果のこと。リーマンショックやバブルなど「まわりはみんな買っている」「乗り遅れたくない」といった心理が働くことを指す。

 

 

〇端数効果

 

「980円」「1980円」などは、「1000円」や「2000円」よりもお得に見えるという現象のこと。これらは「大台割れの価格」と呼ばれる。端数にすることによってお得感を出すことを端数効果という。

 

→お得感を出す効果として「身近なものに例える」というものがある。「2000mgのビタミンC」と言うより「レモン100個分のビタミンC」といったほうが身近に感じられる。「東京ドーム20個分」という表現もこの一つである。これらのものを「シャルパンティエ効果」という。

 

シャルパンティエ効果の応用として、「2回に分けて割引する」というものがある。値札に「50%OFF!」「レジにてさらに20%OFF !」というと、実際は60%OFFなのだが、70%OFF と勘違いしてしまう。

 

〇ライベンシュタインによる人のものの購入による意思決定の研究

 

バンドワゴン効果

 

バンドワゴン効果とは、大衆が「よい」といっているものを、その物を全然知らない人でも「よい」と認識し、周囲と同じ行動をとることをいう。

 

スノッブ効果

 

人が欲しがるものはバンドワゴン効果に代表される「流行もの」だけではなく、限定的、特別なものにも惹かれる。スノッブとは「俗物的」「上流気取りの」という意味であり、「オーダーメイドスーツ」など、他人とは違うものを欲しがる傾向を指す。

 

・ウェブレン効果

 

ウェブレン効果とは、「他人に見せびらかしたい」などの理由で高級品を嗜好することを指す。この場合、物は高価であれば高価であるほど特別感、高級品であることを演出できるようになるため、同じようなものが無印で販売されていても、高級品を購入する傾向にある。

 

〇イケア効果

 

人は自分が手間をかけたものに愛着を持つ傾向があるという考え方のこと。IKEAで買った家具のほうが、既製品の家具よりも愛着を持たれているという研究から名づけられた。

イケア効果のポイントは「最後に手を加える」ということである。部分的にでも、少しでも手を加えることができるのだが、ほとんどが完成しており、最後の一押しを自分でやるものと、ほとんどを自分でやり、最後だけ別のだれかがやったものとでは、前者のほうが価値が高いと人は判断する傾向にある。

 

 

〇おとり効果

 

アリエリーの実験では、以下のような選択をアンケートにて回答してもらった。

 

A:ウェブ版のみ(59ドル)

B:ウェブと印刷版のセット(125ドル)

 

この二択であれば、ほとんどがAのウェブ版のみを選択した。次に

 

A:ウェブ版のみ(59ドル)

B:印刷版のみ(120ドル)

C:ウェブと印刷版のセット(125ドル)

 

この時は、人はCのセット版を一番多く購入した。

この時、三択として、わざと「印刷版のみ」というダミーの選択肢(最初から選ばせる気のない選択肢)を乗せることによって、Cを多く購入させることができた。このことを「おとり効果」と呼ぶ。

 

定本

 

 

 

行動経済学について

〇従来の経済学の基礎の上に、最近話題になっているのが、「行動経済学」である。では、行動経済学とはいったい何なのか。

伝統的な、今までの経済学では、その前提として「合理的な人間」「利己的な人間」を前提条件としていた。これは「どんな状況下にあっても、自己の満足を最大化させることを目的として行動をする」というものである。

 しかし、現実の人間はそうではない。例えば、近くにスーパーがあるのにもかかわらず、自販機で割高の缶ジュースを買う。洋服屋に入れば、「50%OFF!」と書かれている立札を見て、「これはお買い得品だ」と早合点してしまい、よく調べもせずに購入する。周りの人が身に着けているから自分も同じものを買う。といった、一見合理的とは遠い、不合理で感情的な判断をしてしまうのも人間である。

 

このような合理的ではなく、不合理であり、感情的、心理的な経済決定、意思決定の仕方を研究するのが、行動経済学である。

 

〇伝統的な経済学について

 

伝統的な経済学はアダム・スミスの『国富論』にはじまる。そもそも経済学とは、社会の中の富を、その中に所属する人々の幸福を最大化させるためにどう分配すればよいか、といった最適解を探す学問であった。

ケインズは、伝統的な経済学の大家である。「需要」と「供給」のバランスを考え、モノの値段は、そのバランスから自動的に一意に決定されると考えてきた。そして、例えば労働市場において、需要が供給を大きく上回る(=不況)時は、政府が公共事業を増やすことによって供給を大きくすればよいと説いていた。実は、今現在、日本のみならず世界各国で「市場経済に任せておいて、不況が発生したときには、政府が公共事業を行って労働の需要(雇用口)を増やせばいい」と、アタリマエのように言っているが、実はこれはケインズのおかげなのである。ケインズ以前は、このような考えはなかった。現在私たちが高校の教科書でも習うような「アタリマエ」だと考えられている考え方は、実はケインズの考え方なのである。そして、ここにケインズの偉大さがある。

 

 

話は戻り、しかし、現実のものの値段の決まり方は必ずしもそうとはいえない。例えばジュースはそのあたりの自販機では140円前後で買えるものの、富士山山頂近くではコーラが1本800円もする。映画館に行っても、ポップコーンやドリンクの値段は高い。これは、単に「需要ー供給」だけの話では済まされない。

 

プロスペクト理論ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキー)

 

 行動経済学で代表的な理論であるのが、プロスペクト理論である。

 それまでの経済学では、「自分の満足の最大化」を図るように人は行動すると考えられてきた。しかしこのプロスペクト理論は、そうではなく「ヒトは、満足したときよりも損をした時の悲しみのほうが大きい」「ヒトは損を避けるように行動する」といったものである。プロスペクトとは「予想」といったことを指す。

 

 そして、人の中には、個人個人において「参照点(リファレンス・ポイント)」が存在する。これは「その人の中の満足・損失の悲しみの分岐点」である。

 例えばボーナスが月末に30万支給された時を考えてみる。支給される額を、月初に20万と予想していた人にとって(=リファレンス・ポイントが20万)30万の時は満足度が高い。対して、もしボーナスを50万もらえると期待していた人が、実際に30万だった時には損失(=悲しみ)を感じるだろう。この「思ったよりも多く貰えてうれしい」と「もっともらえると思っていた」は、実は同じ感覚ではない。人は「もっともらえると思っていた(損失)」という気持ちを感じるときのほうが、感じ方は大きいのである。

そのため、人は無意識に普段から損失を回避する選択をしがちである。

このような傾向を、人の「損失回避傾向」と呼ぶ。

 

また、人は自分が利益の中にいるときは「リスク回避的」になり、リスクある選択を避ける傾向にある。つまり保守的になる。しかし、自分が損失の中にいるときには、「リスク愛好的」になり、リスクのある選択をとりがちになる。

 

 

〇決定の重み付け(プロスペクト理論

 

 決定の重み付けとは、確率的なものを客観的にではなく、人は主観的に確率的なものを判断するというものである。

 これは、例えば宝くじの1等が1000万の1だった時、これは日本人全員がその宝くじを購入して当たるのは10人という確率だが、買う人は「もしかしたら当たるかも…」といった考えをする。しかし、医師のがん手術の確率が90%であったとしても「10%では失敗するのか」と悲観的になりがちである。このように、人は、確率的なものの見方では、実際には極端に低確率のものを実際よりも高確率に、逆に実際には高確率なものは、人は低確率に見積もる。

 

〇確実性効果

 

確実性効果とは、人は「確実なもの」と「わずかに不確実なもの」では、確実なものを好むという傾向のことである。

 

例えば、「100%の確率で10万円がもらえる」くじと、「80%の確実で20万もらえるが、20%の確率で0円」のくじであると、人は前者を好みたがるというものである。

ビジネスの場においても、これは保険商品で、「元本保証」のものや、ビールのチケットの「全員キャンペーン」などに利用されている。

 

 

〇「双曲割引モデル」

 

割引率とは、「せっかち度」のことである。従来の伝統的な経済学では、この割引率は時間経過に依らず一定とされてきた。しかし、行動経済学では、現在に近ければ近いほど割引率は高く、逆に将来になれば割引率(せっかち度)は低くなる。というものである。どういうことか。

 

たとえば、今日もらえるはずだった1万円が、1週間後(7日後)になったとする。その時、主観的にはショックを受けるだろう。しかしこれが、1年後に1万円もらえる約束だったものが、1年と7日後に1万円もらえることになったとて、そんなにショックではない、と人は感じる。これが、せっかち度は現在に近ければ近いほど高い。(割引率は現在に近いほど高くなる)の意味である。人は無意識のうちに、将来よりも「今を優先したい」という気持ちを持ちがちである。

 

しかし、これらは伝統的な経済学では、前者も後者も「がっかり度は同じ」と考えられてきた。これは、合理的な人間であるならば、現在や将来とは関係なく「7日後は7日後」と、せっかち度(割引率)に変化はないと考えられてきたためである。

 

〇物の決め方の話

 

人は直感的に物事を意思決定する(システマティックとヒューリスティック

 

人は物事を決定するとき、なるべく多くの情報を手に入れ、分析し、その中で決定を下そうとする。これを「システマティック」という。しかし、現在の社会では情報が多く、人が意思決定をするときには必ずしもシステマティックではなく、直感によって「ざっくり」情報を把握し、意思決定を下すことも多い。これを「ヒューリスティック」という。

 

ヒューリスティックには、以下のような種類がある。

・単純化ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティック

アンカーリング

代表性ヒューリスティック

 

・単純化ヒューリスティックとは、「四捨五入」のように、情報をざっくりとまとめる行為のことをいう。

 

利用可能性ヒューリスティックとは、情報の利用可能性が高いほど人はその情報を高く評価するという。例えば、テレビやインターネットで毎回見る情報に対しては、人は「いいものなのかもしれない」という印象を抱きがちである。反対に、ふっと思い出した情報でも、インターネットで調べてもなかなか検索がヒットしないと「探しても出てこないもの」として低く評価されてしまいがちである。

 

アンカーリングとは、初めの印象に意思決定が影響を及ぼされてしまうことをいう。

例えば洋服屋に行き、「50%OFF!1万円」と書かれていた時、その価格を割安だと感じてしまうことをいう。1万円と書かれているが、もしかしたら定価が1万円のものかもしれない。しかし「50%OFF」と書かれていることによって、その値段が「割安」だと感じてしまうのである。

 

代表性ヒューリスティックとは、「日本といえば富士山」といったように、物事の詳細を詳しく調べずに、「~といえば」という印象によって物事をざっくりと把握することである。

少数の例を見て大多数を決めるのもこの代表性である。「芸能人は不倫する」「国際野菜は安全」など。